仕事なんか生きがいにするな 生きる意味を再び考える
- 仕事なんか生きがいにするな 生きる意味を再び考える (幻冬舎新書)
- 幻冬舎
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・精神療法の面接を重ねて、苦悩や症状が緩和されていくにつれて、「量」に偏っていた価値観に変化が起こります。「質」の大切さに目が開かれ、日常のすべてを丁寧に味わうようになっていくのです。
社会的成功や世間的常識などにとらわれず、俯瞰的にこの世の趨勢や人々の在りようを眺めることができた時、人には必ずや「実存的な問い」立ち表われてくるものです。
この「実存的な問い」と向き合う時に必ずや立ち現れてくるに違いない様々なテーマについて、先人たちの思想を参照しつつも、あえて真正面から考えて見た時、そこから現代人が抱える空虚感の正体や、苦悩から脱するヒントが立ち上がるのではないかと思います……。
誰しも子供時代には、自然に「遊び」に夢中になっていたはずなのですが、それがどうして、こんなにも縁遠いものになったのでしょう。それは、物事の「質」を「量」に還元する貨幣経済が、支配的な価値観になってしまったことが挙げられるでしょう。
冒頭と結びの言葉を勝手に繋げたこの部分に、私が自覚する症状の原因と緩和するための方法が示されている。合理性や利便性など「量」に偏っていた価値観から「質」の大切さに目を開くのだ。
現代の市場経済の中で「すぐに役に立つこと」とは、すなわち「売れること」に直結してしまっています。そして「売れること」を追求するとなれば、「わかりやすい」「簡単」「役に立つ」「面白い」といったアピールポイントが求められることになるでしょう。
需給バランスによって価値が決定される市場経済において、これはどうしても避けがたいことです。しかしその結果、本来は奥行きのある「質」を追求すべきものまでが、陳腐化するような事態があちこちにはびこっているのは、大きな問題ではないかと思います。
「すぐに役立つこと」とは「物事を損得で判断する」ということ「かつてはすべての仕事人に要求されていた厳しい専門家が作った物ではなく、機械化の増大や労働の分業によって大量生産されたモノを選ぶ」ということ。大量生産されたモノの仕様は、消費者の様々な欲求を調査してバランスよく満足させるように決められていますが、作り手の拘りは薄められ、愛着という意味では、満たされにくいモノになりがちです。