いまを生きるための思想キーワード
「私」が安心して「主体」として振る舞えるようになるためには、「私」から見て、立派な自立した「主体」であるような他者たちから、対等な立場で「承認」される必要がある。その他者もまた他の”他者”からの承認を必要とするはずである。つまり相互に(無限に)承認し合う関係が成立していることによって、「私たち」は安定的に「主体」たり得るのである。
―逆の言い方をすれば、人は、他者からの「承認」が得られない時、人は、自分に「承認」を与えない他者を「承認」することができない。自分を「承認」しない他者を「承認」することは、自分を否定することに繋がるからだ。そこには、相手を否定するという循環が発生する。この循環が世界規模で発生すると戦争に繋がるのではないだろうか?
自己の個性・自由・歴史性を意識する「人間」の欲望は、「他者の欲望」を欲望する。①他人が欲しがるものを「私」も欲しがる。②他者の欲望を「私」の思うようにコントロールする。③欲望する主体としての「私」を(同じように欲望する主体である)他人に認めさせる。―③相手に認められたいから、①同じものが欲しいし、②相手の欲望を自分の方に向かせようとするわけである。ヘーゲルは、この③を「承認」と呼んでいる。