キアズマ
- キアズマ (新潮文庫)
- 新潮社
- 2016-02-27
- 本
あらずじ…
正樹は、自転車部の部長を怪我させてしまうという事故を切っ掛けに、
1年限定で自転車部に所属することになった。やがて自分の才能に目覚め、
自らの過去と葛藤しながらも、レースに挑んでいく。
『エデン』の舞台であるツール・ド・フランスよりも明らかに小さい
舞台にも関わらず、登場人物の心の中に深く入り込むことによって
無限大の世界観が描かれ、そのスピード感も勝るとも劣らない。
近藤史恵さんは、チカには封印させていた勝利への渇望を正樹には
解き放つことを許す。命を削るように走る櫻井も、正樹に訪れた
チャンスには惜しみなく手を貸すのであった。
読んでいる途中でも、つぶやきたくなるほど興奮しました^^;A
国内のレースだと、周回コースになってしまう。というのも興ざめですけど、
サイクルロードレース特有の、アシストに守られたエースが疾走する。
という絵面にならないのも残念です。さらに、ゴール前のスプリントが
激しいのもどうなんだろう?
いやあ、まだゴール(読了)していない時点でも、買って良かった!
読み始めて良かった!と思えた作品でした…『サクリファイス』から
始まって4作目なのに全くマンネリを感じさせない!
世界は狭くなっているのに、物凄く深くなっている。
ミステリーは面白いけど、やっぱり主人公の成長譚ほど面白い読み物は
ないのだと思う。それとも最後の最後で、読者が無意識に孕まされた
謎が解かれるのか?周回が重なる程、駆引きが繊細になって、
ゴールが近付くところで、残された力を振り絞りスプリントする
レースのようだ。そのコーナーを曲がった先にあるゴールにはいったい
何が待っているのだろう?