ダイナが、岩井さんの猫になるまでには、他の野良猫が、飼い猫になるまでと同じように、紆余曲折がありました。岩井さんの長女、志麻子さんがボウルにミルクを入れて与えた時、後にダイナと名づけられることになる猫は、素直にミルクを飲んだのですが、だからといって、野良猫としての自由を手放すまでには、勇気が必要だったようで、家の中には中々入って来ませんでした。
岩井さんは、猫には人間のための牛乳?が、猫には良くない、という話を聞きつけて、次に猫缶を買ってきて与えました。ダイナは、えり好みせず何でも良く食べました。しかし、岩井さんは更に新たな情報を得たのです。それは、猫の餌には、総合食といって、必要な栄養がバランスよく配合されているものと、栄養バランスについては(あまり?)考慮されていないものがあるということを……。
こうして、ダイナは、徐々に飼い猫のような餌を与えられるようになり、野生?としてのアイデンティティを失ったのでしょか? それとも岩井さんに気を許したのでしょうか? 玄関の中に入って餌を食べるようになったのです。そうなると、もう岩井さんの思うつぼです。ダイナの背後にある扉は、ある時を境に開かなくなったのです。そして、ダイナは、洗濯ネットに入れられ、動物病院へ護送されるように連れていかれたのでした。