ブッダに学び、解脱を目指す。

「ディフェンスラインを上げろ!」というタイトルから、「ブッダに学び、解脱を目指す。」というタイトルに変更しました。私の関心が、仕事から人生へと変わったからです。とは言っても、このブログのテーマは、仏教ではありません。自分が幸せになるために、他の人たちにも幸せになっていただくために、釈尊に始まる仏教の智慧、哲学のアプローチ、心理学の知識を学び、活用していきたいと思います。

作家の猫 Dianaの飯

 ダイナが、岩井さんの猫になるまでには、他の野良猫が、飼い猫になるまでと同じように、紆余曲折がありました。岩井さんの長女、志麻子さんがボウルにミルクを入れて与えた時、後にダイナと名づけられることになる猫は、素直にミルクを飲んだのですが、だからといって、野良猫としての自由を手放すまでには、勇気が必要だったようで、家の中には中々入って来ませんでした。


 岩井さんは、猫には人間のための牛乳?が、猫には良くない、という話を聞きつけて、次に猫缶を買ってきて与えました。ダイナは、えり好みせず何でも良く食べました。しかし、岩井さんは更に新たな情報を得たのです。それは、猫の餌には、総合食といって、必要な栄養がバランスよく配合されているものと、栄養バランスについては(あまり?)考慮されていないものがあるということを……。


 こうして、ダイナは、徐々に飼い猫のような餌を与えられるようになり、野生?としてのアイデンティティを失ったのでしょか? それとも岩井さんに気を許したのでしょうか? 玄関の中に入って餌を食べるようになったのです。そうなると、もう岩井さんの思うつぼです。ダイナの背後にある扉は、ある時を境に開かなくなったのです。そして、ダイナは、洗濯ネットに入れられ、動物病院へ護送されるように連れていかれたのでした。

作家の猫 岩井さんの猫

 岩井さんの猫は、背中が黒く、お腹が白い猫です。その顔だちは、よく「ハチワレ」と呼ばれている模様です。白い顔の人が、バットマンのマスクを被っているように上が黒で下が白になっています。鼻はきれいなピンク色です。


 彼は、男の子なのですが、脚の先がハイソックスを履いているように白く、肉球はピンク色です。岩井さんによると、この手の猫としては珍しいらしく、尻尾の先っぽがキャップを被せたように白くなっています。


 ハチワレ猫は、日本では忌み嫌われているという話もあるようですが、岩井さんは、この猫をとてもエレガントだと思っているようで、男の子なのにも関わらず「Diana(ダイナ)」と名付けました。


 その頃、岩井さんは、会社の指示で「TOEIC」を受けなければならなかったのですが、テキストとして使っていた「不思議の国のアリス」に出てくる、アリスの愛猫が、「Diana」という名だったからです。


 岩井さんは、音だけだったら「ダイナミック」を略して「ダイナ」としているようい聞こえるので、これはこれでいいんじゃない?と言っていました。岩井さんは、けっこう頑固なところがあって、一度決めたことは、曲げない人なのです。

作家の猫 岩井さん猫を飼う

 毎日、パソコンに向かい、コツコツと企業のコラムを書く生活。そんな毎日に猫が加わった。猫の飼い方について調べた岩井さんは、猫を家の中で飼うことにした。オスの猫だったので、動物病院に連れて行って去勢してもらった。猫は、利口なのか、本能なのか、トイレのマナーも最初から完璧だった。


 岩井さんが、パソコンに向かっていると、猫は決まって足下にやってくる。すねに額をこすりつけた後、膝にのってきてパソコンをのぞき込んだり、デスクの上にまでのぼってくることもあった。キーボードにのられてしまうと、仕事は中断しなければならなかった。


 そんなとき、岩井さんは、猫の動画を再生する。誰かがネット上に投稿したものだ。猫同士がケンカしているもの、飼い主に甘えているもの、他の猫の声を聞くと、岩井さんの猫は、不思議そうに周囲を見渡すのであった。


 猫は、あまり水を飲まないと聞いていたが、岩井さんの猫は、よく水を飲む猫だった。岩井さんがトイレに入っていると、中に入りたがり、タンクの上から出てくる水を器用に飲むのである。ボウルに溜まっている水よりも新鮮なのが気に入っているようだった。

作家の猫 岩井さんの仕事

 岩井さんの仕事は、文筆業だ。とはいっても作家ではない。当然のことながら学者などでもない。企業から依頼された文章を書いたり、挿絵を描いたり、企業のホームページに投稿するコラムを書く仕事である。岩井さんは、以前、企業で商品開発や品質保証の仕事をしていた。その仕事をするために、絵を描いたり、文章を書いたりしていたわけだが、定年を機に退職し、ブログを更新するだけの毎日を繰り返していた。


 岩井さんが勤めていた企業では、顧客とのコミュニケーションを促進するために、対話型のホームページを開設していた。お客さんが投稿した質問や意見に、何らかの回答をする。企業のホームページだから炎上は許されない。お客さんの質問に答えるために、多くのことを調べなければならないこともある。過激な意見をいなし、感謝の気持ちを伝えなければならない。企業は家でゴロゴロしている岩井さんに、その仕事を依頼したのだ。


 岩井さんの応対は、しだいに人気が出てきた。コメントを書き込む人は、限られていたが、お客さんと岩井さんとのやりとりが面白いのか、閲覧数の方は順調に伸び、そこから商品を購入するクリックも生まれた。やりとりが「やらせ」ではなく「リアル」だったことが良かったのかもしれない。気を良くした企業は、岩井さんのコラムを開設することにした。そして、現在の岩井さんの仕事が確立したのだ。

作家の猫

 岩井さんは、毎週のようにサイクリングに出かけていた。時には、月に300kmも走ることもあった。それが、猫を飼うようになってからパッタリなくなった。自慢のロードバイクは、玄関の壁に吊されたまま埃をかぶっている。


 毎週水曜日は、可燃ゴミの収集日だった。岩井さんが玄関の外にゴミ袋を出しておくと、決まってゴミがあらされている。猫の仕業だった。岩井さんは、ゴミ袋を包むネットを作ってゴミ袋をおおうようにした。


 それを見ていた岩井さんの長女、志麻子さんは、ボウルにミルクを入れて猫の前に差し出した。猫は、最初は遠くから見ていたのだが、やがて近くにやってきてミルクを舐め始めた。もしかしたら人に飼われていた猫なのかもしれない。


 その日を境に、猫は毎日やってくるようになった。それも日の出とともにやってくる。岩井さんは、60歳になる頃から、早朝に目が覚めるようになってしまい、思い切って4時に起きるようにしていた。


 岩井さんが、新聞をとろうと玄関を開けると、猫はドアの隙間から頭をねじ込んでくる。もうその頃は、牛乳が猫に良くないこともわかっていたので、ディスカウントストアで買ってきたカリカリを与えるようになっていた。