ディフェンスラインを上げろ! @ 作業興奮だ!

ディフェンスラインを上げろ!というタイトルですが、このブログのテーマは、サッカーではありません。私がディフェンスラインを上げろ!と言っているのは、個人や組織の能力の底上げを意味しています。天才ならともかく、凡人は、特定の能力を高めるよりも、汎用性の高い能力の底上げが大切です。この考え方は、私たち一人ひとりの人生にも、組織の運営にも、必要な意識をもたらすものだと信じています。

ダークルーム


著者 : 近藤史恵
角川書店(角川グループパブリッシング)
発売日 : 2012-01-25
 高級フレンチレストランに毎晩ひとりで来店する謎の美女… 自転車に乗る時は、いつもヘルメットをする彼女が長い髪をなびかせ車の前に飛び出した… 隣に引っ越してきた二人の魅力的な青年… つまらない絵を描き、絵に対してピント外れのことを言う男の子… 

 意識では、自分自身の才能を信じたいのだけれども、深層心理では、自分に才能がないことを知っている若者達、彼らは、そんな自分を愛したいのだけれども、意識と深層心理との乖離が自分自身を愛する気持ちを妨げる。

 近藤さん初の短編集は、登場人物の挫折を描くことで、私達が抱く夢をまるで好きな異性への告白を断られるように打ち砕く。それは、現実を突きつけられたり、古傷に塩を擦り込まれるように沁みる。私達は、登場人物の行方から、自分の物語りを紡ぐための手がかりを手繰り寄せるのだ。

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あなたに贈るキス


 2013年に発見された、唇を合わせると感染し数週間で死に至る病。そのキャリアを判定する検査法は、2028年になっても実用化されていなかった。ある日、全寮制の学園で女生徒が亡くなった。彼女は、美詩が「自分を受け入れてくれる場所などどこにもない」と思っていた時に、柔らかい笑顔をくれた人だった。
 始めは少女漫画の様に、近未来の全寮制の学園を舞台に繰広げられる物語は、頁が残り少なくなる頃に近藤史恵さんらしい独特の香りが漂い、読者にも少女のような硬い殻を脱ぎ捨て、大人の女性として翅を広げることを促しているようだった。

 これって、私が読んだ近藤史恵さんの中で、初めてのSF?いずれにしても、男性の作家さんには書けない世界、いつまでも少女の心を忘れない近藤史恵さんが、少しずつ現実を受け入れてゆかなければならない少女たちに贈る物語り。もちろん、既に現実を受け入れ逞しく生きている大人の女性の皆さんにも、あの頃の健気な自分を思い出させてくれるのではないでしょうか?

 近藤史恵さんは、常に新境地を拓くように創作活動を続けられていて、凄いと思います。でも、どの世界も、結局、史恵ワールドに収斂してしまうという結末もファンにとっては嬉しいではありませんか!「何らかの理由で自分の居場所を見つけ出せないでいる少女~若い女性が、新しい出会いから出口を見出し、力強く歩きだす。」という物語りは、多くの読者に、希望と勇気を与えてくれるような気がします。

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ナミヤ雑貨店の奇蹟 (角川文庫)


 ナミヤ雑貨店と丸光園という児童養護施設をめぐって繰り広げられる物語は「ナミヤ雑貨店のシャッターポストと牛乳箱を通じて二つの時制が繋がっている」という設定だ。それにしても東野圭吾さんは、こんなに心暖まる話も描けるのね♪失礼なことを思ってしまう程、良い本だった。もしかしたら私がこの本を手に入れられたのも『ナミヤ雑貨店の奇蹟』かもしれない…

 「第五章 空の上から祈りを」の9からは、まさに頁を捲る手が止まらず、文字を追う目のスピードが全速力になりました。そして、この素晴らしい結末の余韻を楽しめないようなスピードでゴールを走り抜け、クールダウンも出来ずにその場に倒れてしまいました。『ナミヤ雑貨店の奇蹟』は、私が出会った33冊目の東野作品ですが、今は、この物語りが一番好きです。これからゆっくり余韻を楽しみます^^

 2012年3月に角川書店から刊行され、ブックオフでもこなれた値段になっていたので、なんでもっと早く読まなかったのかなぁとちょっとだけ後悔しました。東野圭吾さんは、ただのベストセラー作家ではない。読者の心の中に、希望と勇気を灯すことのできる作家さんなんだなぁ~と改めて思いました。

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エデン


 時々、誰かに薦めたくなるような作品に出会う。この『エデン』も間違いなくその一つだ、この物語りを堪能するためには、前作である『サクリファイス』を読んでおくことが欠かせないが、それだけの価値がある。前作である『サクリファイス』は、私にとって「物語の不自然さ」が気になった。それに対して『エデン』は、非常にリアリティがあり『サクリファイス』を超えた傑作だと思う。

 正に『サクリファイス』というアシストの陰からトップに躍り出てマイヨ・ジョーヌを手に入れてしまったエースのようだった。

 人間の強さと弱さ、醜さと美しさを描きだし、世界の光と闇を感じさせる。前作同様、チカの成長譚とも思える淡々とした展開が、終盤になって急展開!伏線を流し読みした私の予想を超えた事件が起こり、ニコラの心を追込む。そう、この物語りも、チカの一人称で語られるが、本当の主役はニコラなのかもしれない。彼は、才能に恵まれただけの完全無欠のヒーローではなかった、生き残るために、夢をかなえるために、ドニを利用し、狡猾に這い上がって来たのだった。しかし、運命はニコラの良心に試練を与え、ニコラは苛まれ、ドニに告白してしまう。

 私たちの人生も、実は自分自身の力によってもたらされたものではない。両親や兄弟の犠牲の陰から躍り出て得たものに違いない。私達も、チカやニコラほどではないにせよ、夢をかなえるために、自分自身が気が済むように生きるために、誰かを犠牲にして生きている。

 私たちは、誰かを犠牲にして生きている…また、誰かの犠牲になっている…でも、それは、この世に生まれてきた以上、絶対に避けられないことでだ。だからこそ、チカのように犠牲になってくれた人の思いを裏切らないように生きたいし、犠牲になることを自分の自己実現に繋げたいと思った。

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2017年4月の読書メーター…

2017年4月の読書メーター…佐藤 優さんの『嫉妬と自己愛-「負の感情」を制した者だけが生き残れる (中公新書ラクレ)』に収められている佐藤 優さんと斎藤 環先生との対談を読んだことを切っ掛けに、ジャック・ラカンに引き込まれた4月でした('◇')ゞ

読んだ本の数:13読んだページ数:2934ナイス数:987
脳が壊れた (新潮新書)脳が壊れた (新潮新書)感想著者の鈴木大介さんは、ここ十年来、虐待や貧困といった環境的理由でドロップアウトし、犯罪行為に手を染めてしまった若者など、社会的に発言の機会が与えられない弱者を取材してきた記者だ。そんな鈴木さんが脳梗塞に襲われたのは、2015年の初夏、41歳の時であった…鈴木さんは、脳梗塞によって失われたものに対峙する最中で、自分の症状が「多大な不安とストレス中で神経的疲労を蓄積させ、認知判断力や集中力が極端に落ちた弱者の状態」と合致することに気づき、プロの取材記者として、自分の体験を文書として客観的に記録するのであった…読了日:04月30日 著者:鈴木 大介
レジリエンス入門: 折れない心のつくり方 (ちくまプリマー新書)レジリエンス入門: 折れない心のつくり方 (ちくまプリマー新書)感想物理用語の「外圧による歪み」という意味の「ストレス」に対して「レジリエンス」は、その歪みを跳ね返す力です。嫌なこと、辛いこと、悲しいことを経験すると私たちはへこんだり、途中で挫けそうになったり、落ち込んだりします、そんな嫌な気分をもとの正常な状態に戻す力です。レジリエンスは、視点を増やすことによって鍛えられ、強化する過程で一生の財産となる「グリット(遠いゴールに向かって興味や情熱を失わず、とてつもない長期にわたって、継続的に努力し続けることによって、物事を最後までやり遂げる力)」も手にすることができます。読了日:04月27日 著者:内田 和俊
ハーバード白熱日本史教室 (新潮新書)ハーバード白熱日本史教室 (新潮新書)感想あとがきに「回顧録から始めたこの本ですが」とあるように、冒頭は、まるで日記のような滑り出し…アマゾンのカスタマーレビューも賛否両論だったことから、つまらない本を掴んでしまったか?と心配になったが、そこからは"九州の高校を出た理系の彼女が、ハーバード大学で251人の履修生を獲得する日本史のレクチャラーになるまでの14年間が180ページに圧縮され"常人には考えられない速度で経歴を獲得して行くプロセスが圧巻の展開だった。私は思う、北川智子さん、人は、あなたのような女性を「Lady Samurai]と呼ぶのだと…読了日:04月25日 著者:北川 智子
生き延びるためのラカン (ちくま文庫)生き延びるためのラカン (ちくま文庫)感想曖昧な記憶と照し合せる限り『生き延びるためのラカン』は、20代の頃、伊丹十三さんと岸田秀先生との対談『哺育器の中の大人』を読んだこと以来の衝撃だった。「シニフィアン」「シニフィエ」なんて言葉が出てくるもんだから、丸山圭三郎さんの『言葉とは何か』と『ソシュールを読む』の事項索引を引きながら読み進めた。私に最も恩恵をもたらしてくれたLectureは、10「対象a(タイショウアー)をつかまえろ!」だ。「対象a」とは「欲望の源泉」のこと…決して確かめることは出来ないが、求めてやまない「恋人の心」のようなものだ…読了日:04月16日 著者:斎藤 環
一生衰えない脳のつくり方・使い方 成長する脳のマネジメント術一生衰えない脳のつくり方・使い方 成長する脳のマネジメント術感想築山節先生の本を読むのは、『脳が冴える15の習慣、フリーズする脳、脳と気持ちの整理術』に続いて4冊目です。終章「いくつになっても脳は成長できる」で、先生は「いくら仕事にやりがいがあるといっても、同じフィールドにいつづけることは、脳の偏った使い方になってしまいます。ですから、自分で意識して新しいフィールド(できれば一人きりの趣味の世界ではなく、他の人たちとのやりとりがある社会的な場がいい)を求めていく姿勢が必要です。」と仰っています。先生は、還暦が近くなってきた頃から、英語の勉強をやり直しはじめたそうです。読了日:04月15日 著者:築山 節
科学的とはどういう意味か (幻冬舎新書)科学的とはどういう意味か (幻冬舎新書)感想森博嗣先生の言い回しを借りれば、この本が示しているのは、「データ(情報)」ではなく「メソッド(方法)」である。だから、この本に書かれている内容を憶えるために、書棚の一等地に置き、7回読む必要はない。「メソッド(方法)」を腑に落としたら、後は、実践あるのみである。何か、疑問に思った時、文学的!?に理解しようとするのではなく、データを比較し、科学的に理解しようと努めよう。そうすることで、私のような文科系?も、少しだけ真の理科系!?に近づけるかもしれない。但し、参照するデータがどのように測定されたか確認しよう。読了日:04月12日 著者:森博嗣
仕事と幸福、そして人生について仕事と幸福、そして人生について感想カザリさんから★ナイスをいただいたことを切っ掛けに、6年半ぶりに再読しました。岸見一郎さんの『幸福の哲学』、斎藤環さんの『人間にとって健康とは何か』、山竹伸二さんの『認められたいの正体』を読んだ後でしたので、この本のタイトルであり、テーマでもある『仕事と幸福、そして人生について』を前に読んだ時よりも理解することができました。また、受け入れるだけではなく、自分の頭で考えることもできました。生きることは、成長するということだと思いますが、それを、仕事を通じて実現することによって、幸福に繋がるということですね。読了日:04月09日 著者:ジョシュア・ハルバースタム
「認められたい」の正体 ― 承認不安の時代 (講談社現代新書)「認められたい」の正体 ― 承認不安の時代 (講談社現代新書)感想2011年04月24日読了なので、6年前に1度読んだ本です。山竹伸二さんによると、゛現代は承認への不安に満ちた時代であり、私たちが考えなければならないのは「自由と承認の葛藤」を解消し両立させる道にほかならない。自己決定による納得感によってのみ、自由と承認は両立する可能性を持つ。”とのことです。身近な人間の承認を得るために、自分の意思を押さえることによって、身近な人間関係は円滑になるかもしれないが、自分の感情は抑圧されて人生が無意味化してしまうわけですよね。両立させることは、難しいことだと思いますが…
読了日:04月09日 著者:山竹 伸二
傷つくのがこわい (文春新書)傷つくのがこわい (文春新書)感想>何かをしなければならないとき「自分」が評価されると思うと、落ち度があってはいけませんから、自分を守ろうとする方向への意識が向きます。恐いのです。ただ「役割を果たすのだと割り切れば「自分が傷つく恐れは低くなります…そう言われてみると、私は、常に自分が試されているような気持になっているような気がします。だから、何かをしなければならないとき、とても緊張しますし、逃げてしまいたい気持ちを抑えるために、自分を奮い立たせなければなりませんが、仕事が上手く行かないからと言って、人格を否定されているわけではないのです。読了日:04月08日 著者:根本 橘夫
人間にとって健康とは何か (PHP新書)人間にとって健康とは何か (PHP新書)感想読みやすかったので、同時に買った『承認をめぐる病』『生き延びるためのラカン』よりも先に読了してしまいました。>絶望的な状況下では、希望と冷静さを失わない゛強さ”こそが求められる。それは゛健康な鈍感さ”でもあるだろう。この強さを解く鍵は、SOCとレジリエンス。゛わかる・できる・意味がある”こと、この三要素がバランスよく発達することが゛健康生成”においては重要なのだ…心の健康と幸せは、表裏の関係にあるのかもしれません。どちらが先かわかりませんが、幸せの条件、不幸になる状況を知ることで健康になりたいと思います。読了日:04月07日 著者:斎藤 環
じぶん・この不思議な存在 (講談社現代新書)じぶん・この不思議な存在 (講談社現代新書)感想<わたしはだれ?>という問いに答えはない。だれかある他者にとっての他者のひとりでありえるというなかに、自分の存在を見いだすことができるだけだ。≪他者の他者≫であるかどうかは、レインも言っていたように、他人のなかにじぶんが意味のある場所を占めているかどうかにかかっている……だとしたら、自我を支えるために、自分が、だれかある他者にとって、意味のある存在だろうか?という問いに自信を持って応えられるよう、人生のあらゆる局面で有効な選択をしなければならない。準備さえできていれば、意味のある存在になれるはずだからだ。読了日:04月05日 著者:鷲田 清一
「自己愛」と「依存」の精神分析―コフート心理学入門 (PHP新書)「自己愛」と「依存」の精神分析―コフート心理学入門 (PHP新書)感想齋藤環先生の『生き延びるためのラカン』を読み始めた時、そう言えば、佐藤優氏の『嫉妬と自己愛』に収録された対談で、齋藤先生が「自己愛を徹底的に軽蔑したラカンに対して、コフートは“人間は自己愛がないと生きてはいけないのだ”と唱えた」と仰っていた。齋藤先生の本を読み進めるに当たって、コフートについても知っておいた方が良いかもしれない、と、2005年に読了した、この本を引っ張り出しきた。アドラー心理学などに出会った後で読むと、12年前に読んだ時よりも、コフートの治療者としてのスタンスが、理解できるような気がする。読了日:04月03日 著者:和田 秀樹
嫉妬と自己愛 - 「負の感情」を制した者だけが生き残れる (中公新書ラクレ)嫉妬と自己愛 - 「負の感情」を制した者だけが生き残れる (中公新書ラクレ)感想佐藤優さんによると「イエスは、隣人を単に『愛しなさい』と言っているのではなく『自分のように愛しなさい』と言っていることが重要であり『自分を愛することができない人が、他者を愛することなどできない』というのが、キリスト教の愛に対する考え方である。従って自己愛はとても重要な概念であるが、嫉妬と隣り合わせの感情であり、制御することはとても難しい」とのこと。私たちは「健全な自己愛」を獲得するために、自分が自分を大切にするように、他人も自分を大切に思っている。それを許容できるようになる必要がある。読了日:04月01日 著者:佐藤 優
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