魔術はささやく
- 魔術はささやく (新潮文庫)
- 新潮社
- 本
物語りは、二人の女性の自殺と、一人の女性の交通事故死という事件から
始まり、一人の女性の事故死が、不幸な境遇にありながら健気に生き、
ようやく落ち着いた家族を手に入れた青年の人生に再び暗雲を呼び寄せる。
女性をはねたのは、青年を引きとった伯父が運転するタクシーだったからである。
青年は、伯父が関与した事故が業務上過失致死罪ではないことを証明するために、
立ち上がる。
最後の最後で、次から次へと真相が明らかになるという波状攻撃で、
まさに文字を追う眼と頁を捲る手が止まらなくなりました。
不幸な境遇に置かれた人が、その境遇にどのように耐え、
どのように脱出してゆくか、家族を信じ、自分自身を信じ、
自分の中の闇と闘い、光を手繰り寄せるのか、この作品を読んで、
改めて宮部さんの作品を読みつくしたいと思いました。
第二回(1989年)日本推理サスペンス大賞を受賞したという
肩書がなかったとしても、私は、この作品が宮部みゆきさんの
代表作の一つとして押したいと思います。